タンパク質〇〇%以上や灰分〇〇%以下等のドッグフードの成分表示を気になった方は沢山いると思います。
新しいドッグフードに移行する時は成分をチェックしますが、最初の頃はその数字が何を表しているのか、この数字が高いのか低いのかすら分かっていませんでした。
でもちゃんと意味を理解しないと愛犬に与えた方が良いドッグフードを本当の意味では理解できません。
これからでも遅くはありません。
成分分析値や成分保証値を正しく理解して愛犬に美味しくて身体にあったドッグフード選びをしていきましょう。
・ドッグフードに成分に詳しくなりたい方
・ドッグフード選びに困っている方
・愛犬の体にあったご飯を選びたい方
目次
ペットフードの基準に関する法律
まずペットフードに関する法律をご紹介いたします。
愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)
この法律に沿って日本国内で市販されているドッグフードは製造・管理・販売されています。
しかしこの法律は施行されたのは、なんと2009年。
実は2007年3月、アメリカ合衆国にて有害物質のメラミンが混入したペットフードが原因となり、多数の犬及び猫が死亡する事故が発生しました。
そして同年6月に日本でもメラミンが混入したペットフードが輸入販売されていたことが判明しました。
事態を重く見た日本の政治家や関係省庁の方が作ったのがペットフード安全法でした。
今まで製造メーカーや販売業者等が自主的に守ってきたペットの安全を法律で守っていこうという形になったのです。
しかし、制定されたのは今から13年前。まだしっかり整備もされていない上に基準も厳格化されていないのでこれから徐々に整備されていくことになるでしょう。
日本はまだまだペットフード後進国なのです。
ペットフード先進国の管理体制
ではペットフード先進国の欧米ではどのように管理されているのか。
The Association of American Feed Control Officials(全米飼料検査官協会)
通称:AAFCO(アフコ)
AAFCOはペットフードの栄養基準やラベル表示の基準を公表しているアメリカの団体です。
栄養基準の世界基準と言っても過言ではなく、日本のペットフード公正取引協議会もAAFCOの栄養基準を採用しています。
間違えてはいけないことが、AAFCOは栄養成分の基準を公表しているだけであり、原材料の品質や安全性は担保していません。
簡単に言えばドッグフードにタンパク質25%以上あれば成長には問題ありません。「タンパク質25%以上の肉」と言っても、品質が高い最高級の肉の可能性も、低品質の腐りかけの肉の可能性もありますということです。
で栄養素としては問題ありませんが、原材料に問題がある場合もあるという事です。(極端ですが)
AAFCOは認定や承認の機関ではない
ここで間違ってはいけない事があり、AAFCOは認定や認証・承認をする機関ではないということです。
あくまでもペットに与えるドッグフードの成分はこれくらい欲しいです。といった基準を示しているだけなので、AAFCO自体が認定や承認をすることはありません。
したがって「AAFCO認証」や「AAFCOが認めたドッグフード」等、AAFCOに申請して審査されて結果が出たフードの意味合いで記載されているドッグフードは虚偽になります。
基準が明確になっている為、「AAFCOの基準をクリアしている」と記載があっています。
5大栄養素のそれぞれの役割と必要量
さて長々と説明してきましたが、AAFCOの基準に沿って成分の内容量を把握することでペットにより良いご飯を与えることができます。
5大栄養素と呼ばれるタンパク質・脂質・繊維質・灰分・水分をそれぞれについて把握しておけばドッグフード選びに楽しくなってきます。
5大栄養素はペットフード安全法の観点でも重要視されていて、ドッグフードには必ず記載しておかなければならない項目です。
成分①タンパク質
タンパク質とは臓器や骨の形成、筋肉の発達等の身体の成長の基本となる欠かすことのできない重要な栄養素です。
したがってドッグフードの中でも含有割合が1番多い栄養成分になります。
AFFCOの栄養基準(2016)によると
幼犬 | 成犬 |
22.5%以上 | 18.0%以上 |
幼犬(月齢10ヶ月~15ヶ月)の場合は内臓や器官等の身体の内側や毛質や皮膚など身体の外側まであらゆる場面で成長していく為、高タンパクの食事を摂取し健康的に体の成長を促していく必要があります。
成犬の場合には成長もある程度緩やかになり、子供の頃よりは少なくても問題ないですが、他の栄養素の割合から比べると遥かに高い数値になっています。
ほとんどのドッグフードでは成犬用になると18%以上あることが多いので、選ぶのは苦労しません。
幼犬用で22.5%以上となるとドッグフード選びの際には、成分表をしっかりとチェックした方が良いでしょう。
低い | ⇒ | 中間 | ⇒ | 高い |
~ 18% | 18~22% | 22~24% | 24~28% | 28% ~ |
成分②脂質
脂質とはホルモンや細胞膜、脳神経組織などの材料となり、脂溶性ビタミンの吸収を助ける大切な役割も担っています。
AFFCOの栄養基準(2016)によると
幼犬 | 成犬 |
8.5%以上 | 5.5%以上 |
AFFCOの基準はかなり低めで設定されて、市販で販売されているドッグフードはほとんどが超えている物が多いです。
しかも大体は10%以上のものが多いですが、食べ続けても肥満になることはありませんので安心して下さい。(もちろん適切な食事回数・運動をすればの話です)
しかしタンパク質や炭水化物に比べてカロリーは2倍以上異なるので食べ過ぎには注意が必要です。
脂肪制限をかけなくてはいけないペットがいるご家庭の場合には、手作りご飯も視野に入れておく方がよいでしょう。獣医師さんと相談しながらドッグフードか手作りかは判断したいですね。
低い | ⇒ | 中間 | ⇒ | 高い |
~ 8% | 8~12% | 12% | 12~16% | 16% ~ |
成分③繊維質
繊維質とは消化器官の健康状態を保つ為に必須の栄養素です。
しかしながらAFFCOでも繊維質に基準は作っていませんが、一般的なドッグフードには繊維質は5%未満が多いです。
愛犬の健康状態に応じて、特に便秘や下痢等の症状が出ている場合には含有量を変えるべきポイントになってきます。
低い | ⇒ | 中間 | ⇒ | 高い |
~ 2% | 2~ 5% | 5% | 5~10% | 10% ~ |
成分④灰分(かいぶん)
灰分(かいぶん)とはミネラル分のことを指します。元々は食材を灰になるまで燃やして残ったものを測定するので灰分と名付けられています。
ドッグフードには灰分が●%以下と記載が義務付けられていますが、必要なのはその灰分の中の成分の含有率が重要になってきます。
AAFCOの栄養基準によると
幼犬 | 成犬 | |
カルシウム | 1.2% ~ 1.8% | 0.5% ~ 1.8% |
リン | 1.0% ~ 1.6% | 0.4% ~ 1.6% |
カリウム | 0.6%以上 | 0.6%以上 |
ナトリウム | 0.3%以上 | 0.08%以上 |
塩化物 | 0.45%以上 | 0.12%以上 |
マグネシウム | 0.06%以上 | 0.0%6以上 |
特にカルシウムとリンの関係性が重要で、カルシウムはもちろん骨を形成する大切な成分なんですがリンは過剰に摂取するとカルシウムを奪ってしまい骨が弱くなる可能性も高いです。
しかしリン自体も骨を作る上で大切な成分になる上に、脳や神経でエネルギーを作る為に必要な成分なのです。
幼犬 | 成犬 | |
カルシウム:リン | 1:1~2:1 | 1:1~2:1 |
カルシウムとリンのバランスが重要となり含有量の基準は幼犬と成犬で異なりますが、バランスは変わりません。
その他も灰分を取り過ぎてしまうと消化率が悪くなるうえに、その他の灰分成分の邪魔をしてしまうことにもなるので注意が必要です。
低い | ⇒ | 中間 | ⇒ | 高い |
~ 2% | 2~5% | 5% | 5~10% | 10% ~ |
成分⑤水分
水分は文字通り水の含有量を表す部分で、体内で栄養素の運搬や体温調整などにも役立つ必要な成分です。
しかい水分に関しては他の成分とは異なり直接飲むことも多い為、ドッグフードには10%前後しか含まれていないものも多いです。
ドライフード | セミウェット フード | ウェット フード | |
水分量 | 約10% | 20% ~ 35% | 70% ~ 75% |
1日に犬が摂取が必要な水の量は簡単に求めることができ、「体重(kg)×0.75乗×132(ml)」とされていています。
一覧表にしておくので目安にしてもらえればと思います。
1kg | 3kg | 5kg | 7kg | 9kg | 10kg |
132ml | 301ml | 441ml | 568ml | 686ml | 742ml |
15kg | 20kg | 25kg | 30kg | 35kg | 40kg |
1,006ml | 1,248ml | 1,476ml | 1,692ml | 1,899ml | 2,100ml |
その他の知っておいた方がいい成分
カロリー
ペットフード安全法では表示義務はありませんが気にした方がいい項目の一つで、一般的には100gあたり350~380キロカロリーが一般的です。
低カロリー | 標準 | 高カロリー |
350㎉以下 | 350㎉~380㎉ | 380㎉以上 |
ドッグフードのカロリー数も重要ですが、細かく言うと個体差があり幼犬・成犬、去勢/避妊の有無などでその犬ごとに必要なカロリーは異なります。
愛犬の必要カロリー数を把握するには、
生きる為に必要なエネルギー(RER)と1日に必要なエネルギー(DER)を知らなければなりません。
何もせず安静にしている状態でも必要とされるエネルギー量
RER = (体重)0.75 × 70
運動や避妊/去勢、年齢等ライフステージに応じて必要なエネルギー量
DER = RER × 係数
幼犬 | 0~3ヶ月 | 3~9ヶ月 | 9~12ヶ月 |
係数 | 3.0 | 2.5 | 2.0 |
成犬 | 未去勢 未避妊 | 去勢済 避妊済 | 高齢 |
係数 | 1.8 | 1.6 | 1.4 |
成犬 | 減量中 | 増量中 | |
係数 | 1.0 | 1.4 |
最後に、与えるドッグフードの量ですが
※100gあたりのカロリー量はドッグフードのパッケージに載っていることが多いです。
現体重 4.4キロ 10ヶ月 避妊済
RER = (4.4)0.75 × 70 ≒ 212
DER = 212 × 1.6 ≒ 340 (成犬の避妊済みの1.6計算)
1日あたり340キロカロリーを取る必要性があるので、
100g340キロカロリーのドッグフードの場合は
1日100g、1日2回の食事では1回50g与える必要があります。
必須アミノ酸
タンパク質から変化するアミノ酸の中でも体内で合成できない必須アミノ酸が全部で10種類あります。
AAFCOでの栄養基準によると
幼犬 | 成犬 | |
アルギニン | 1.0%以上 | 0.51%以上 |
ヒスチジン | 0.44%以上 | 0.19%以上 |
イソロイシン | 0.71%以上 | 0.38%以上 |
ロイシン | 1.29%以上 | 0.68%以上 |
リジン | 0.90%以上 | 0.63%以上 |
メチオニン | 0.35%以上 | 0.33%以上 |
フェニルアラニン | 0.83%以上 | 0.45%以上 |
トレオニン | 1.04%以上 | 0.48%以上 |
トリプトファン | 0.20%以上 | 0.16%以上 |
バリン | 0.68%以上 | 0.49%以上 |
タンパク質はドッグフードの成分には含有比率的にも多く入っているので、問題が無い場合が多いです。
必須脂肪酸
体内で合成できない脂肪酸であるオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は、ドッグフードから摂取しなければなりません。
それがオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は皮膚や毛にとって必要な成分になり不足がちになると炎症を起こすこともあります。
AAFCOの栄養基準によると
幼犬 | 成犬 | |
リノール酸 (オメガ6脂肪酸) | 1.3%以上 | 1.1%以上 |
α-リノール酸 (オメガ3脂肪酸) | 0.08%以上 | – |
大多数のドッグフードには記載されていなくても含有されている為、大きく心配はいりません。
まとめ
今の日本はペットフード後進国ではありますが、基準に関しては先進国の基準を採用している為、比較的安全なドッグフードが多いです。
タンパク質や脂質などの5大栄養素がとても重要ですがそれ以外のカロリー等まで気を配れると、なお愛犬の為のドッグフード選びも楽しくなりますね。
覚えれば覚えるほど、愛犬のご飯を選ぶときに役立つし、今の体型・体調・状況など考慮して最適なご飯を選べると思います。
健康的な食生活を送ることができれば、その分一緒にいられる時間も長くなっていくため良い事尽くしですね。
成分だけではなく原材料や危険な添加物をまとめたものはコチラです。合わせて見るとより分かりやすく理解できます。
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